どうしようもないことと どうしてもできないことは かなりちがう

放送大学に3年次編入→2019年に卒業。その後は再入学しマイペースに勉強しています

【感想】世界文学への招待('16)

※私の個人的な感想です。
※私が履修した2018年度1学期時点でのことです。

 

世界文学への招待('16)
人間と文化コース 導入科目 択一式 持ち込み可

昨年度に履修した「文学のエコロジー」でのお話しがとても楽しくて印象に残った宮下志郎先生と、大学教授で芥川賞作家でもある小野政嗣先生が主任講師。←この時点で超魅力的な科目。更に他の先生方がかわるがわる講義を担当し、世界の様々な地域の文学やその歴史についてを学ぶことができる、とっても豪華な構成。放送大学の外国文学の重鎮宮下先生が、各専門分野の研究者を束ねて作った渾身の科目だぞ!という気迫を感じる。小野先生が執筆されている印刷教材の第1章が、これまでの放送大学の教材で例がないくらいに流麗で詩的な文章で、読み始めてすぐにこりゃすごい科目を履修しちゃったかもしれないというゾワゾワ感がやってくる。

第1回放送で、宮下先生と小野先生が「世界文学への扉をすこし開き、皆さんを引っ張り込む、そういう役割にしたいと思いこの科目を作った。きっとそのきっかけくらいにはなれていると自負している。だからこの放送授業を絶対に最後まで視聴して欲しい。絶対に!!」といったことをものすごく熱く語っておられた。お二人の情熱がびしびし伝わってきて「絶対観ます!!」って強く思った。

「世界文学」と聞いてまず思いつくような作家(ドストエフスキーシェイクスピアなど)は取り上げられず、この科目を受講しなかったら全く存在を知らないままかもしれないようなアラブや朝鮮などの作品が紹介される点が面白い。また、日本の文学も世界の中では世界文学になるのだという事も語られる。

(放送授業に登場する先生としては)新進気鋭であろう藤井光先生、憧れの作家にインタビューできて大喜びする小野先生、岡真理先生の気持ちのこもった朗読、すごくイメージ通りな大学教授の阿部賢一先生とラフな観光客みたいな小野先生のコンビでお送りするロケ、韓国語での朗読を授業に沢山盛り込む渡辺直紀先生(韓国語がわからないながらもこういう機会に聞けて新鮮だった)、マイケル・エメリック先生の流暢な日本語に時折混じる「~んです」にちょっとほんわかする…等々、見応え充分盛りだくさんな放送授業。

そして、講義全体を通じて感じるのは、文学作品が生まれるのは歴史や作者の生い立ちに依るところが大きいということ。戦争や貧困、差別や民族の分断、独裁的な政治や抑圧など、大変な出来事を経験したから書かれる、叫びのような文学作品が世界にはたくさんあるのだということに気付かされる。私たちが楽しい小説や架空の物語を読んで楽しめるのは現代の日本が平和だからこそ。

自分自身は日本文学のほうが好きだと思っていたので、この科目にはあまり注目していなかったのだけど、試験日が都合が良いという理由でシラバスを読んで興味を持ち履修に至った。きっかけはこんなだったけれど本当に履修して良かったです。とっても面白かった。
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