どうしようもないことと どうしてもできないことは かなりちがう

放送大学に3年次編入→2019年に卒業。その後は再入学しマイペースに勉強しています

【感想】上田秋成の文学('16)

※私の個人的な感想です。
※私が履修した2017年度1学期時点でのことです。

 

上田秋成の文学('16)
人間と文化コース専門科目 択一式 持ち込み可

白状すると「上田秋成」をこれまで知らなかった。でも「雨月物語」ならタイトルを聞いたことがあり、図書館から借りて読んだら面白かったので「コレを書いた方についての科目ということなら大丈夫だやってみよう!」と思い履修に踏み切った。「夢応の鯉魚」のファンタジックさと爽快感が好きです。

庶民が読むような身近な作品を手がけた方なので私にも理解しやすく、たいへん魅力的に紹介されていたと思う。「夏月」の和歌は水と魚と月がキラキラ光って涼し気なのが感じられるし、「見ても居ないし体験しても居ない、1ヶ月後の行事について想像で書いた文章」のエピソードが面白かったしとても素敵。

きっと凡人では突出した芸術家にはなれないのだろうけれど、この授業を通じて知る上田秋成は「かなり偏屈で周囲から煙たがられていた」か、もしくは関西の方なので「おもろい(変人の意味で)奴がおもろい文章書いてる」的な人だったのではなかろうか…だけど生涯を通じて人脈に恵まれていたらしいので、人間的な魅力があった人なのだろう。

第14回で、秋成が偶然に祭りの会場で渡辺源太(30年前に起きたセンセーショナルな事件の当事者)に会ったことで、その事件を小説化する(2回も)という話題が出てくる。現代で言えば福田和子が何度もドラマ化される様な感じだろうか…。もし私が渡辺源太やその家族の立場だったら「30年前の事件を今更話題にするなんてもうやめてー放っておいてー」と思うんじゃないかなと想像してしまう(笑)。※渡辺源太やその家族は信念を持って事件を起こしたようなのでそんな風には考えないのかも。

担当の長島弘明先生は冷静ながらも熱心な語りで、上田秋成やその作品が大好きでいらっしゃるのだろうなというのがひしひしと伝わってくる。ラジオながらも大変聞きやすく楽しい放送授業だった。ジングルとして流れる尺八の調べが渋い。

ひとりの人物だけに焦点を当てた科目は珍しいのかも知れないけれど、他の作家や他の分野(作曲家や研究者など)のこういう科目があったら楽しそう!と思う。